ウラジオストク ダーチャの記録
プロフィール
名前:大林千茱萸(おおばやし・ちぐみ)
職業:映画監督/食作法講師
プロフィール:東京生まれ。11歳で書いた原案『HOUSE』(77)が映画化。以降、世界各地で映画と食を学び、その体験を活かしTV・ラジオ・雑誌・講演などで活動。監督作『100年ごはん』(13)は【映画を観て+同じ釜の飯を食べ+語り合う】方式で世界各国250か所にて上映され現在も巡回中。長野県上田市【うえだ城下町映画祭/自主制作映画コンテスト】審査員。「昭和天皇の料理番」渡辺誠に師事し、テーブルマナー(国際儀礼)教室主宰。ほか部員数約8千人の【ホットサンド倶楽部】を主宰。著書に『未来へつなぐ食のバトン』(筑摩書房)。『ホットサンド レシピ100』『ホットサンド倶楽部』(共にシンコーミュージック・エンタテイメント)。『フィルムメーカーズ1:リュック・ベッソン』(キネマ旬報社)。映画監督の大林宣彦は父。
ズドラーストヴィチェ!(こんにちは!)――と、帰国してもなお、初めてのウラジオストク旅のことを反芻する日々が続いています。それがどれほど愉しかったか、旅の体験をこちらで皆さまに少しシェアさせて戴くことになりました。しばしお付き合いのほど宜しくお願い致します。
私の初ウラジオストク旅は2019年9月23日~10月1日の8泊9日。移動でタクシー使ったのは帰りの空港まで一度きりで、滞在中は主に徒歩、バス、トラム。ウラジオストクはまるでサンフランシスコか長崎のように「坂の町」でしたが、高低差があるだけに目的地も見付けやすく初心者に歩きやすい町。しかも素敵なカフェやストロバヤ(食堂)、日本にはまだまだ少ないアゼルバイジャン料理やジョージア料理のレストランもたくさんあり、8泊9日3食+オヤツ(←大事!)で毎日違うお店に入っても廻りきれないほど美味しく愉しく雰囲気の良いお店がたくさん。ついついアチコチに入店してしまい、100メートル進むのに1時間くらいかかりました(笑)。
観光スポットとしては噴水通り、海辺通り、ミリオンカ、グム百貨店裏、中央広場、ウラジオストク駅、潜水艦C-56博物館、鷲の巣展望台、キタイスキー市場など基本を抑えつつ、遊覧船、トカレフスキー灯台、沿岸地方水族館(←最高!)を訪問。滞在中にはタイミング良く1年に1度の「ウラジオストク国際マラソン」と「トラの日」も重なりました。ちなみに「トラの日」は美味しい屋台に愉しいイベント、ライヴ、打ち上げ花火ありと盛りだくさん! 一つ一つのスポットが個性的すぎるから、想い出を綴るだけで1冊の本が書けそうです。
中でも想い出深い体験となったのが「ダーチャ」訪問です。


家に入ると床には瓶詰めがずらり。冬のための保存食たちです。


お野菜たちはすべてお庭で採れた無農薬のもの。ボルシチのお肉と添えられたスメタナ(サワークリーム的なもの)はご近所の酪農家さんと野菜を物々交換。
ほぼ自給自足の食事が美味しくて美味しくて、ボルシチは3杯お代わりして満腹――と思いきや、突然大きなボトルを持ち出してきたお母さん先生。見ればボトルの中にはハーブや果実、お花でギッシリ!? 「強いわよ!」とショットグラスに注いでもらい戴くと、喉にビシっと染みてゆく。わわっ、強いけどとっても美味し~い!!! 正直、この旅で口にしたものでいちばん美味しかった。聞けば自家製の薬草酒だそうで、どんどん継ぎ足してゆく(ウナギのタレか!)ので「もうナニがどれだけ入っているのかわからないわ」とざっくり豪快(笑)。しかしこの薬草酒の美しさ、まるでボタニカルアートではないですか!
食後はお母さん先生が少女だった頃のお話しに花を咲かせながら(この話しがドラマチック!)お茶タイム。お茶はもちろんお庭で摘んだハーブティー。自家製の桃のコンポート、蜂蜜が優しいお味でほっぺが落ちます。すっかり満腹×ほろ酔い=ご機嫌であっという間に帰宅時間に。名残惜しい気持ちを抱えつつ御礼のハグをして帰路に着きました。
今回のダーチャ体験はアレンジをJATMさんにお世話になりました。
私が訪れたダーチャはウラジオストクの中央広場から車で30分ほどの郊外。通訳ナージャさんは料理家でもあり、マニアックな私の質問にも丁寧に応えて下さいました。個人で回れる定番の観光スポットはもちろんですが、プライベートにカスタムできるダーチャ体験はベテランのJATMさんにお願いして大正解。ぜひ皆さんも旅に「私だけ」のダーチャ体験を組み込んで見てはいかがでしょうか。とくに食いしん坊さんにオススメです!